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■ なぜ北米では妊娠中の体重増を奨励するの?
カナダ・アメリカで妊娠した方の中には、医師や看護婦さんから、もっと体重を増やすようにと、叱咤激励され、精神的にちょっと(かなり)辛いという方が少なくないようです。
「日本人は、もともときゃしゃな体型。だから、体格の良い白人女性と同じ基準で体重を増やすように言われても今ひとつ納得できない」
「日本では、妊娠中の体重増は8kg前後と医者に指導されているのでは?」
「白人の女性達は、妊娠をきっかけに肥満体型になってしまうのでは? わたしは、そうなりたくない 」
こう思っていたり、人から聞いている方は多いのではないでしょうか?
妊婦の体重管理指導は、カナダ・アメリカでは、現在のところ特にないようです。そのためか、妊婦の40%が太りすぎと指摘されています。信じられないことですが、なかには妊娠中に60kgも体重が増えてしまった女性もいて、20kg 、30kgぐらいの体重増は普通のようです.
そのなかで、小柄な「日本人妊婦のおなかはとても小さい」と医療関係者の目には映ってしまうのではないでしょうか。
■ 妊娠中の体重管理がないのはなぜ?
なぜ、カナダとアメリカでは、妊娠中の体重管理についての特別な指導がないのでしょう?
歴史を振り返ってみると、1970年、アメリカの国家研究委員会は、妊婦の体重増は8kgから9kg増が望ましいと推奨しました。ところが、その結果、おなかの中の赤ちゃんが大きく育たず、出産時の体重が2500g以下の低体重児が予想以上に生まれてしまいました。
これを受け、1990年以降、米国医学研究所は、妊娠前の体格がふつうだった人は、妊娠中の体重増を11kg-16kg にすることが望ましいと発表しました。
現在は、カナダとアメリカ両国で、妊娠前の体格が、やせ型、ふつう、肥満の場合、どのぐらいの体重増が望ましいのかを発表されています。ですが、日本のように厳しい指導をしているところがあまりないのが現状です。これは、妊娠中の病的な症状の発生の有無や分娩の方法とも関係しています。
妊娠中の体重増は、日本では妊娠中毒症や糖尿病につながる可能性が高くなるといわれています。また、胎児が大きくなりすぎたり、産道に脂肪がつきすぎると、赤ちゃんが出てくるのが大変になり、帝王切開になる可能性が高くなるとも言われています。
アメリカ人やカナダ人はどうかというと、日本人に比べると妊娠中毒症になる率は大変に低く なっています。なぜ、人種によって妊娠中毒率に違いがあるのかは、妊娠中毒症の原因自体がわかっていないこともあり、今のところ解明されていません。
糖尿病も、アメリカ人やカナダ人がかかる率は、日本人よりも低くなっています。
このことから、妊娠中の体重増が妊婦の健康に大きな影響を与えるという心配は、日本ほどではないと考えられます。
帝王切開ですが、自然分娩よりも計画的に安全で早くお産が進められるという利点があること、アメリカでは自然分娩の最中に何か異常が突然起きた場合、それが原因で医師が家族から訴えられてしまうケースが多いことから、医師はたとえ自然にお産ができる状態であっても、最初から帝王切開を勧める傾向があります。
このためアメリカでは4人にひとり、カナダでは5人にひとりが帝王切開しています。比べて日本は10人にひとりと、帝王切開率は大変に低くなっています。
また、最近は、妊婦の体重増よりも、体重が2500g以下の低体重児の出生数が増え問題になっていることから、体重が増えないことの方が、医療関係者には心配の的といえそうです。
■ 体重管理が厳しすぎ、弊害が増えてきた日本
日本では、妊娠中の体重が増えすぎると、妊娠中毒症や糖尿病になる恐れがあるとの指摘があり、医療関係者の間で体重増を押さえる指導が何年か前からずっと続いてきました。
国際比較でも、日本人が妊娠中毒症にかかる割合は、北米やヨーロッパ諸国に比べるとかなり高くなっています。また、糖尿病は、妊娠にかかわらず、日本人は、北米人に比べてずっとかかりやすい病気となっています。
適切な体重管理は妊婦にとって大変に大切な事です。ですが、最近は、指導の行き過ぎや、女性の間でのダイエットの流行に伴い、体重を無理に抑える妊婦さんが増えてしまいました。
このため、赤ちゃんの体重が2500g以下の低体重児の割合が、1993年では6.8%だったのが、2003年には9.1%に増えてしまいました。赤ちゃんの出生数1,12万3,610人に対して、低体重児は10万2,320人 です。
低体重児は、呼吸や消化機能が未熟な場合があります。また、胎児期の栄養不良は、成人後の肥満の原因になったり、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を引き起こすという報告もあります。
このことから妊娠中の不適切なダイエットは、赤ちゃんにとっては決して望ましいものではありません。
■ 厚生労働省、ダイエットする妊婦に警鐘
厚生労働省は、妊娠時の体重増制限のため、低体重児の出生数が増加しているのを危惧し、2006年2月に、妊娠時の望ましい体重増についての発表を行いました。
「妊娠期における望ましい体重増加量」は、やせている人は9〜12kg、ふつうの人は7〜12kgとし、肥満の人は個別に対応するようにとなっています。
注意点として、妊娠中の体重増加は個人差が大きく、このため、食事や運動の量に配慮する事、そして、画一的な目標を目指さない事をあげています。
■ 日本と北米の「妊娠期における望ましい体重増加」 の比較
カナダ・アメリカでは、妊婦の望ましい体重増加量はどのように定められているのでしょう?
妊娠中の推奨体重増加量については、カナダは健康省、アメリカは農業省が公式発表をしています。日本は厚生労働省が情報を公開をしています。
これによると、 カナダ・アメリカの基準を日本人にあてはめた場合、日本ではふつうの体格とみなされた人が北米では低体重に、日本では肥満とされても北米ではふつうの体格となってしまいます。
例えば、身長155cm 47kgの人、あるいは身長160cm 体重 50kgの人だと、日本の基準ならふつうの体格になります。ですが、北米では、両者とも低体重に入ってしまいます。このため、妊娠中の望ましい体重増は、日本なら10kg〜12kg前後なのに、北米では16kg〜18kgとなってしまいます。
下の表は、3つの国の体格別の推奨体重増加量を表しています。
体格区分の「低体重、ふつう、肥満」は、妊娠していないときの体格を表しています。体格は、BMIを計算で割り出して判定します。
| 日本 | カナダ・アメリカ | ||||
| 体格区分 | BMI | 推奨体重増加量 | 体格区分 | BMI | 推奨体重増加量 |
| 低体重 (やせ): | 18.5未満 | 9kg〜12kg | 低体重 (やせ): | 20未満 | 13kg-18kg / 28-40 pounds |
| ふつう: | 18.5以上25.0未満 | 7kg〜12kg(※1) | ふつう: | 20〜27 | 11kg-16kg / 25-35 pounds |
| 肥満: | 25.0以上 | 個別対応(※2) | 肥満: | 27以上 | 7kg-11kg / 15-25 pounds |
| 双子 | データーなし | 双子 | 16kg-20.5kg / 35-45 pounds | ||
■ 貴女のBMIは、いくつでしょうか?
貴女の体格を判定するため、BMIという計算方法を使ってみましょう。
(BMIとは、Body Mass Indexのこと)
BMI値=[現在の体重(kg)]÷[身長(m)×身長(m)]
身長はセンチメートル、体重は、キログラムとパウンド、それぞれどちらでも計算できます。
■ 自分のBMIの数値にあわせて望ましい体重を知る
ここで大切なのは、BMIの結果、体格がふつうと判定されても、
「じゃあ、いちばん軽い7キロ増にしよう!」
と、飛びつかないことです。
厚生労働省の説明では、 体格区分が「ふつう」の場合、BMIが「低体重(やせ)」に近い場合には推奨体重増加量の上限側に近い範囲を、「肥満」に近い場合には推奨体重増加量の下限側に近い範囲を推奨することが望ましいとしています.(※1)
これによると、例えばBMIがやせとの境界である18.5でふつうと判定された場合、体重増は7キロではなく12キロ前後が望ましいとなります.
BMIで肥満であるとの数字が出たとき、ふつうと肥満の境界になる25.0をやや超える程度の場合は、およそ5kgを目安とし、著しく超える場合には、他のリスク等を考慮しながら、臨床的な状況を踏まえ、個別に対応していきます。(※2)
■ 妊娠中の体重増はどうして起きる?
妊娠中の望ましい体重増加量は、どうやって決められるのでしょう??
妊娠中の体重は、赤ちゃんの体重や、胎盤、羊水、母乳を出すための胸の組織の発達や脂肪の貯蔵、より多くの血液の供給、赤ちゃんの成長と共に大きくなる子宮の重さなどによって増えていきます。この重さを合計すると、日本人は8kgから10kg、アメリカ人は、約11kgから16kgぐらいになると言われています。
なぜ重さが日本人と北米人では違うのかですが、 例えば、赤ちゃんの平均体重が違います。日本は3kg、アメリカでは3.6kgです。胎盤の重さは胎児の重さに比例すると言われ、その結果、アメリカのお母さんの体重も重くなります。羊水や血液の供給、子宮も、胎児が大きければ大きいほど、量や重さが増えてきます。
このデータだけを見ても、アメリカの基準を日本人にそのままあてはめることには無理があると言えそうです..
妊娠中の体重増はこうして起きる
| 日本 | アメリカ Web MD | |
赤ちゃんの体重 |
3kg | 3.6kg / 8 pounds |
胎盤 Placenta |
0.5-0.75kg | 0.9-1.3kg / 2-3 lb |
羊水 Amniotic fluid |
0.8kg-0.9gk | 0.9-1.3kg / 2-3 lb |
乳房の組織 |
0.5kg-1kg | 0.9-1.3kg / 2-3 lb |
血液の供給 |
1kg-1.5kg | 1.8kg / 4 lb |
母乳を出すための脂肪の貯蔵 |
? | 2.3kg-4.1kg / 5-9 lb |
子宮の重さ増 |
? | 0.9kg-2.3kg / 2-5 lb |
合計 |
8kg- | 11kg-16kg / 25 to 35 lb |
※ 上記のデータは、あくまでひとつの参考に過ぎません。別の調査では、若干異なった数字が出ています.
Nurse Midwifery
■ 体重管理に気を使いすぎない
基本的には、野菜や肉を偏らないように取り、甘いものや食べ過ぎに注意し、適度な運動をしていれば、体重が過度に増えることもなく、健康に赤ちゃんを産むことができます。つわりで一時期、十分に食べる事ができなくても、妊娠後期になれば、母体も安定し、食欲も出てきてお産への準備が進みます。
体重管理に気を使いすぎ、それがストレスになってしまえば、母体にも良くなく、赤ちゃん誕生を楽しみにしているパートナーにもストレスが伝わってしまいます。
妊婦になったからと、体重計に毎日のる必要はなく、ちょっと気になったときに測ってみる。それぐらいの余裕で妊婦生活を楽しむことが、母体にとってはいちばん健康的です。
■ 産後、体重は元に戻るの? postpartum weight loss
出産後の体重増は、妊娠中に極端に太りすぎたりしなければ、特に努力をしなくても、8ヶ月から1年ほどでほぼ元の体重に戻るというデータがあります。これは、赤ちゃんの世話をしたり、母乳を出すためたくさんのエネルギーを使ったり、粉ミルクを準備するの忙しかったりするからと言われています。
カナダやアメリカでは、妊娠中に必要以上に太り過ぎる人が多いことから、産後は、バランスの取れた食事をカロリーに気をつけてとること、適度な運動を欠かさないことを奨励しています。
■ 体重を増やすように言われて困ったとき
「医師や看護婦から、妊娠中の体重を増やすように言われたけれど、日本の基準からすると、今の体重には問題がないはず。」
そんなときはどうしたらよいのでしょう?
大切なのは、妊娠中の体重増について自分で勉強しておく事です。医療関係者は、日々の仕事に終われ、意外と最新の情報や研究報告から遠ざかっている事もありえます。
妊娠中の望ましい体重増についての英語訳がこちらにあります。→ 英語バージョン
もしも医師に日本の基準はどうなっているのか聞かれたら、この表を印刷して見せれば役に立つかもしれません。
もしも、皆様の中で、「医師にはこう説明すると、わかってもらえる」という体験があれば、ぜひお知らせください。
参考までに・・・・・
■ アメリカの妊婦さんの4割は、望ましい体重増を超過
アメリカのコーネル大学の調査では、妊娠中、政府が推奨する体重増を越えてしまった妊婦が4割もいることがわかりました。さらに妊娠出産した人たち全体の4分の1が、出産後、平均4.5kgも体重が増えていました。研究者は、妊婦が推奨されている体重増を守れば、56%の人は、出産後の体重増を防ぐ事が出来るはずだと言っています。
調査では、妊娠中、肥満の人のうち68%、超肥満の人のうち46%が、推奨された体重増を越えていたと報告しています。
体格がふつうの人でも38%が推奨体重を越えています。その中で、痩せている人は12%と推奨体重増をいちばんよく守ったグループになっています。
| カナダ・アメリカ | |||
| 体格区分 | BMI | 推奨体重増加量 | 推奨された体重増を超えた人の割合 |
| 低体重 (やせ): | 20未満 | 13kg-18kg / 28-40 pounds | 12% |
| ふつう: | 20〜27 | 11kg-16kg / 25-35 pounds | 38% |
| 肥満: | 27以上 | 7kg-11kg / 15-25 pounds | 68% |
| 超肥満 | 7kg-11kg / 15-25 pounds | 46% | |
■ 推奨体重増を守らなければ、将来は、肥満か超肥満化への恐れあり
アメリカ政府の統計によると、25歳から55歳の女性の50%が太りすぎで、そのうちの半数が、超太りすぎと言われています。妊娠出産がきっかけで、肥満、あるいは超肥満にならないよう、研究者達は、体重管理は真剣に行われるべきだと警告しています。
参考文献:
→ 「妊産婦のための食生活指針」(厚生労働省)から
妊娠前の体型を考慮した望ましい体重増加量に
非妊娠時の体格や妊娠中の体重増加量によって、出生児の宅中及び妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、帝王切開、分娩時出血等の状況に相違がみられる。
非妊娠時に「低体重(やせ)」に属する者は、低出生体重児分娩や子宮内胎児発達遅延(IUGR)、切迫早産や早産、貧血のリスクが高まり、「肥満」に属する者は、糖尿病や巨大児分娩、帝王切開分娩、妊娠高血圧症(妊娠中毒)のリスクが高まる。
また妊娠期に体重増加量が著しく少ない場合には、低出生体重児分娩や切迫流産、切迫早産のリスクが高まり、体重増加量が著しく多い場合には、前期破水や妊娠高血圧症候群(妊娠中毒)、巨大児分娩、抵抗切開分娩、分娩時の出血過多、羊水混濁、胎児心拍数異常のリスクが高まる。
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