海外旅行者への予防接種の原則(表2)

表2 海外渡航者への予防接種の原則
1 時間的余裕をもって相談してもらうようにする
2 渡航寸前にはワクチン接種は行わない 生ワクチン:2〜3週間以内
                  不活化ワクチン:4日以内
3 多種同時接種方式を組み込むこともある
4 EPIワクチン(BCG・DPT・麻疹・ポリオ)を最優先とする
アジア方面では日本脳炎も優先的に行う
5 現地で必要とされるワクチンは必要である
6 長期滞在であれば、渡航後は現地の接種スタイルに合わせる
7 一時帰国の可能性があるなら、そのときに日本で追加を行うことがある

余裕のある予防接種計画:海外渡航ことにそれが海外への赴任に伴ってのことであったり、留学であったりする場合、限られた時間内に準備やら手続きやら多くの事をしなくてはならないため、ついぎりぎりになってからの受診になりがちである。しかしある程度のものを計画的に行うためには時間的余裕が必要で、少なくとも2〜3か月、できたら半年ほどの余裕が欲しい。
旅行寸前のワクチン接種は避ける:旅行寸前のワクチン接種は、万が一の副反応あるいはある程度予測ができる反応(例えば麻疹接種後10日目の発熱・発疹など)などが旅行中や滞在地に到着したばかりの不安定な状態にあっては好ましくないので、できるだけ避けるようにしたい。そのためには旅行寸前のワクチン接種(生ワクチンであれば旅行前2〜3週間以内、不活化ワクチンでは旅行前3〜4日以内)は行わないようにする。
接種間隔(表3)と多種同時接種方式(表4):わが国ではDPT以外は単独接種が原則であり、生ワクチン接種後次のワクチンまでは4週間以上の間隔、不活化ワクチン接種後次のワクチンまでは1週間以上の間隔が定められている(表3)。これは生ワクチン同士による干渉作用や、副反応が生じたときの原因追求をより分かりやすくするなどが主な理由である。海外ではDPT/ポリオさらにこれにB型肝炎(HB)/ヘモフィルスインフルエンザb菌(Hib)、あるいはMMRなどの組み合わせによる同時接種が日常的に行われている(表4)。これは接種回数そのものを減らすことと、受診回数を減らすことによりワクチン接種を徹底しようとする意図が含まれているもので、より多種の混合ワクチンにするための開発が進められている。
 旅行前の時間に余裕のない場合などは、黄熱とコレラワクチンの組み合わせを除き(共に効果が減衰するとされている)、多くのワクチンは多種同時(同日)接種方式を採用することが可能である。この場合は、わが国の予防接種要領にも認められている方式であること、医学的には通常問題のないこと(副反応発生率が高くなったり、ワクチン効果が減弱することはない)などを本人または保護者に説明し、了解を得る必要がある。なお同時接種であっても、DPTなどのように製品として混合ワクチンとなっている場合を除き、それぞれのワクチンをそれぞれ異なった部位に接種する。また同時(日)に接種することは可能であるが、日をおいて接種する場合には前述の間隔をそれぞれ開ける必要がある(表3)。


表3 予防接種の間隔

ポリオ・麻疹・風疹・BCG・水痘・おたふくかぜ・黄熱など



DPT・DT・T・日本脳炎・HB・HA・インフルエンザ・狂犬病・Hibなど

※混合ワクチンを使用する場合を除き、2種類以上の予防接種を同時に同一対象者に対して行う同時接種は、
 医師が必要と認めた場合に限り行うことができる。(予防接種実施要領より)



表4 日本と海外接種方法の違い
日本 海外
BCG 管針(スタンプ)法 注射法(臀部・大腿部・上腕部など)
(BCG接種をしない先進国も多い)
ポリオ 経口生ワクチン 一部不活化ワクチン注射法
または経口生/不活化混合方式
同時接種 DPT以外は単独 DPT/ポリオ +HB +Hib
MMR