帰国子女・在日外国人の子どもへの予防接種の原則


 海外から帰国してきた子どもたち、日本へやってきた子どもたちに対しても、上記の海外渡航者への予防接種の原則は、ほぼそのまま海外から日本へ来た人への予防接種の原則、と読みかえて良いであろう。日本での予防接種を希望してくる外国人については、逆に日本と海外では接種種類や方法に違いのあることを説明した上で、日本スタイルを踏襲するのか、本国スタイルをできるだけ踏襲したいのかなどについて、あらかじめ聞いておくことができれば、より親切な方法となる。


日本と諸外国における予防接種の実際についての相違点


受けるワクチンの種類の違い(図1):世界各国でほぼ共通のものとしては、既に述べたEPIワクチン、すなわち麻疹・ポリオ・DPT・BCGである。B型肝炎ワクチンは、WHOでは第7番目のEPIワクチンとしてとらえており、これに従って出生した新生児すべてに接種するという方式を導入する国が増えつつある。
 日本では、日本脳炎が海外からみて特殊なワクチン(中国・韓国・タイなどでは実施、ベトナム・マレーシアなどでは一部で実施)であり、風疹・ムンプスは単独接種、水痘が実用化されている。インフルエンザは65歳以上の高齢者および60歳以上で一定の基礎疾患を有するものでは定期接種(第二種)、その他の年齢では任意接種として幅広い年齢層への接種が可能となっている。
 一方海外では、麻疹・風疹・おたふくかぜはMMRとして同時接種、ヘモフィルスインフルエンザb菌ワクチン(Hib)を採用する国が増えつつある。海外に在住する子どもたちが現地でMMR・Hibを受けるメリットは高い。BCGは海外の多くの国でEPIワクチンとして乳児期に行われているが、結核の状況が比較的良好である欧米諸国では、BCG接種を中止ないし選択的接種の方向にあるので、小児については、できるだけ日本にいるうちに接種を受けておいた方がよいと思われる。水痘を導入している国も増加しつつある。インフルエンザを導入している国の多くは、その対象者は高齢者などのハイリスク者としている。


図1 予防接種:海外との比較


接種方法の違い(表4):接種方法では、ことにBCGの違いに戸惑うことが多い。BCGの管針法(経皮接種)は日本独特のものであり、海外では皮下注射が原則である。管針法の方が局所反応は少ないという利点がある。最近まで我が国ではBCG接種前にあらかじめツベルクリン反応は行われていたが、結核予防法の改正(平成17年4月)によってBCG接種前のツベルクリン反応は、海外同様我が国においても行われなくなった。ポリオはほとんどの国が経口生ワクチン(OPV-3回以上接種)を用いているが、欧米を中心として不活化ポリオ(注射-IPV)単独もしくはOPVとの併用を採用している国が増加しつつある。
接種時期と回数の相違(表5):接種時期については、総じてBCG、OPV、DPT、HBなどの開始時期は日本より早い。なるべく早く免疫をつける必要があるという基本的な考え方で行われているからである。麻疹については多くの国が1歳から開始をしているが、乳児麻疹の予防から生後9か月から開始する国も多い。また麻疹対策を徹底的にしようとするところから、2回接種法式を導入する国が増加している。この際、麻疹のみならずMMR2回接種という方式を採用する国も少なくない。
 わが国あるいは海外で行われることの多いワクチンについて表6にまとめた。


表6 わが国及び海外で行われているワクチンの一般的な接種法
種類 基礎接種回数 接種間隔 接種可能年齢 追加接種
日本で定期予防接種の対象になっているワクチン(ここでは海外渡航者向けの接種回数・可能年齢を示しています)
BCG※ 生菌 1 生直後より可 なし
ポリオ※ 経口生
ワクチン
3〜4 4週間 生直後より可 12〜18か月後
不活化
ワクチン
3 4週間 生後6週 12〜18か月後
三種混合※ 不活化
ワクチン
3 4週間 生後6週 12〜18か月後
二種混合 不活化
ワクチン
2 4週間 生後6週 6〜12か月後
破傷風 トキソイド 2 4週間 通常6歳以後 6〜12か月後
その後10年ごと
はしか※ 生ワクチン 1〜2 9か月 6〜12歳が望ましい
風疹 生ワクチン 1 1歳 場合により思春期
日本脳炎 不活化
ワクチン
2 1〜4週間 生後6か月
より可
1〜4年後
必要に応じて日本で接種しているワクチン
おたふくかぜ 生ワクチン 1 1歳 なし
水痘 生ワクチン 1 1歳 なし
インフルエンザ 不活化
ワクチン
2 1〜4週間 生直後より可 毎年
B型肝炎 リコンビナント 3 4週間 生直後より可 なし
肺炎球菌 蛋白多糖体 1 4週間 2歳 5年以上
海外に行くときに必要になることがあるワクチン
黄熱 生ワクチン 1 9か月 10年
A型肝炎 不治化
ワクチン
2・3 4週間 生直後より可 12〜18か月後
狂犬病 不治化
ワクチン
3 7日、28日 1歳 その後2〜3年ごと
コレラ 生・死菌
ワクチン
1 1歳 3〜6か月後
ペスト 不活化
ワクチン
3 18歳 6か月後
日本で入手できないワクチン
MMR 生ワクチン 1 1歳 6〜12歳が望ましい
Hib 蛋白多糖体 3 4週間 生後6週 6〜12か月後
腸チフス 経口生
ワクチン
3 2日 6歳 1年後
髄膜炎菌性
髄膜炎
2価・4価 1 2歳 3〜5年後
原表:中村安秀責任編集「海外に行く 親と子の予防接種/母子衛生研究会」を一部改変、「International Travel and Health WHO,Geneva,1994 P80-81及び2000 Red Book,American Academy of Pediatrics P24」を改変
※EPIワクチンとされるもの