<わが国で定期接種として行われるもの> BCG:BCGは結核予防法に基づいて行われている。最近まで4歳未満(6か月〜1歳)、小学校1、2年、中学校1、2年でツベルクリン反応陰性者に対して接種が行われていたが、平成17年4月の結核予防法改正以後、生後6か月までの接種となり、ツベルクリンによる事前の確認も廃止された。乳幼児の結核予防にBCGは高い有効性が認められており、海外の多くの国で早期乳児期でのBCG接種がEPIワクチンとして行われている。BCG未接種の乳幼児に対しては、渡航先にかかわらず出国までに接種を済ませておくことを勧める。成人に対しては、通常BCGは必要としない。結核の状況が良好である欧米諸国では、BCG接種を中止ないし選択的接種の方向にある。BCGを行わない米国やヨーロッパの一部の国などでは、入学時の健康診断などでツベルクリン反応陽性者に対して結核の予防投薬を行うので、検査を受ける際にBCG接種の有無についてあらかじめ正しく伝える必要がある。
ポリオ:地球上からのポリオ根絶を目指して、各国とも投与の徹底を行っているEPIワクチンの一つ。日本が属するWHO西太平洋地域では、2000年10月ポリオ根絶地域であることが宣言された。わが国では1964(昭和39)年から生ワクチンの定期接種(2回投与)が行われるようになり、1981年以降の患者発生はなく、現在に至っている。日本は2回投与法でポリオ患者発生ゼロが続いているが、海外では通常3回以上の投与が行われる。したがって長期滞在の小児に対しては、国内または渡航先で合計3回以上の接種が必要となる。 ほとんどの国が経口生ワクチン(OPV)を用いているが、欧米を中心として不活化ポリオ(注射─IPV)単独もしくはOPVとの併用を採用している国が増加しつつある。 成人でポリオワクチンの接種歴が不明な場合には、少なくとも1回以上の接種をしておくことが勧められる。昭和50年代前半に出生した人たちのポリオ抗体保有状況は、他の年代に比較して有意に低いことが明らかにされているので、この年代の人が海外へ行くときはポリオの追加接種をしておくことが勧められる。 ジフテリア(D)・百日咳(P)・破傷風(T)(DPT三種混合及びDT二種混合):いずれの疾患もワいずれの疾患もワクチン接種がきちんと行われていなければ、どこの国にいても発病の危険性が高くなると考えられており、各国ともEPIワクチンの一つとしてワクチンの徹底を図っている。 百日咳ワクチンについてわが国では1981(昭和56)年全菌体型から無細胞型(acellular vaccine)ワクチンとなり、改良型百日咳ワクチンを含むDPT三種混合ワクチン(DTaP)が導入され現在に至っている。海外でも無細胞型改良百日咳ワクチンを導入する国が増加しつつある。なお海外ではこの改良型をnew type vaccineと表現することがある。 基礎的な免疫を保つためには、多少の間隔が予防接種法による規定からずれても合計4回(・期3回プラス追加1回)のDPTを接種しておくことが必要である。日本ではDTの追加接種(・期)は11〜12歳に行われるが、海外での追加接種年齢はまちまちで、これを省略する国もある。 百日咳の成人での罹患は軽症で終わることが多いが、ジフテリアと破傷風の予後は不良であるため、成人でDPT未接種のものにはDTによって基礎免疫(DTで・期2回プラス追加1回)を確実にしておいた方が良い。基礎免疫が終了しているものについては、前回のDPTまたはDTからほぼ10年以上を経ている場合にはDTで1回の追加接種をすることによって、ジフテリア・破傷風両疾患に対する免疫を再び維持することができる。ジフテリアの追加免疫については行き先の流行状況で判断してもよいが、破傷風は世界至る所に存在する疾患と考えて対処した方がよい。なお海外では、新生児破傷風の予防のために妊婦に対して破傷風ワクチンの接種をルチンに行っている国もある。 麻疹:麻疹は、小児のみならず成人でも感染発病すれば、1週間以上の高熱が持続するだけではなく肺炎・脳炎などの合併症併発の危険が高く、現在の医療をもっても死に至ることがある重症感染症としての認識が必要である。各国ともEPIワクチンの一つとしてワクチンの徹底を図っているが、わが国の麻疹ワクチン接種率はまだ中途半端な状態に留まっている。小児で1歳以上での出国であれば、麻疹ワクチンは最優先として接種を済ませる。流行地では、生後9か月で麻疹ワクチン接種を行う国もあるので、この場合には任意接種として早期に行うことを考えておく必要がある。 わが国では麻疹ワクチンは定期接種として単独接種で行われるが、海外では麻疹・風疹・おたふくかぜ混合ワクチン(MMR)を採用する国が増えている。また麻疹の予防を徹底するため、麻疹あるいはMMRの2回接種方式を取り入れる国も増えている。例えば米国などで小学校以上大学を含めて現地の学校に入学あるいは転校する場合には、学校側より麻疹の追加接種を要求されることがある。なお、追加接種によって副反応が初回接種より高く発生する可能性はない。 成人で麻疹に感染したこともワクチン接種もしたこともないものに対しては、海外旅行の有無にかかわらず麻疹ワクチンの接種が強く勧められる。発展途上国を除き、多くの国では麻疹の発症数が激減している。日本の麻疹患者数はまだ多く、日本から海外へ持ち出してはならない疾患の一つである。 風疹:風疹及び先天性風疹症候群の予防を目的として行われる。わが国では風疹ワクチンは定期接種として単独接種で行われるが、海外ではMMRとして小児へのルチン接種を勧めている国が増加している。しかし経済的事情から導入できない国も多く、EPIワクチンには含まれていない。 思春期以降のことに女性で風疹に感染したこともワクチン接種もしたこともないものには、海外渡航の有無にかかわらず風疹ワクチンの接種が強く勧められる。ただしこの場合、妊娠していないこと、2か月間は妊娠をさけることを確認する。 日本脳炎:日本脳炎ワクチンは、わが国では3歳以上から定期接種として開始されることが標準的であるが、生後6か月からでも定期接種として開始が可能である。東南アジアの流行地へ長期に旅行する場合には、3歳未満であってもEPIワクチンに次いで接種をしておくことが勧められる。日本脳炎ワクチンを広く導入している国は、日本・韓国・中国・タイなどの一部であり、追加接種(9歳以上13歳未満及び14歳以上16歳未満)についても日本にいるうち(一時帰国のときなど)になるべく済ませておくようにする。 成人で、東南アジア方面への長期旅行者であって、これまでの日本脳炎ワクチン接種が不完全かあるいは未接種の場合には基礎免疫から、接種が完全であっても最終接種から5〜10年以上を経ていた場合には追加接種を行う。
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